フィンランドは自然が豊かな国です。
フィンランドの森は歩くだけで楽しいですが、美味しいベリーやキノコがたくさん採れて二度楽しいんです。
6月頃からはベリーが、7月頃からはキノコがそれぞれ秋頃まで採れます。
今回は、「フィンランドの森の恵み、キノコ」と題して、今年初めてのキノコ狩りの様子を紹介します。
誰でもキノコを採る権利がある
フィンランドでは自然享受権と呼ばれる権利が認められています。
これは、フィンランドの住民や観光客ならだれでも平等に自然の中でのレクリエーションを楽しむ自由を認めているものです。
その中には、野生のベリーを摘むことや、キノコを採ることも含まれます。
もちろん、野生生物保護区や私有地への立ち入りや、むやみに自然を荒らすことはいけませんし、狩りや釣り等ではライセンスの取得が必要な場合が多いので責任をもって行動することが求められます。
森の中は童話の世界
どんなキノコが採れるかという話をする前に、フィンランドの森に分け入って出会えるキノコたちの姿をどうぞ。なんとも神秘的で、愛らしいキノコたちです。
木々と苔に囲まれたキノコたちを見ていると、たとえ毒キノコであっても風景とマッチしていて、童話の中にいるような気分になります。
足音以外は聞こえない静かな森を歩くと、自分がいかにちっぽけな存在か思い知らされると同時に、森の一部になったような不思議な気分になります。
注) 上の3枚の写真は昨年9月のものです。
初心者向けで美味しいキノコ、カンタレッリ
一口にキノコと言っても生えている場所や時期によって豊富なバリエーションがあります。
食べてもおいしくないキノコ、猛毒のキノコもあります。
そのため、確実に見分けられる食用のキノコを採るのが鉄則です。
私たちがいつも採るのは「カンタレッリ」と呼ばれるキノコです。
和名だと、「アンズタケ」と呼ばれるそうです。名前の通り、アンズのようなフルーティーな香りがあります。
カンタレッリは早いと6月終わりころから見られ、9月頃まで採れます。
白樺や松の根っこに生えるキノコで、鮮やかな黄色が特徴的です。
上から見るといびつな傘をしていて、傘の裏側はしわしわなひだがあります。
カンタレッリは松や白樺の根元に生えます。
今までの経験だと、松や白樺の根元で苔が蒸すくらい湿った場所に生えていて、落ち葉や下草が多い場所や乾燥した場所にはあまり生えない印象があります。また、うっそうとした森よりも、開けたやや新しい森の方が多い印象があります。
分かりやすい特徴を持つキノコなので、安心して採ることができます。
ただ、大変なのが落ち葉との見分けがつきにくいことです。
カンタレッリが欲しい一心で歩いていると、黄色いものがすべてカンタレッリに見えてきます。森の神様は人間の心が見通せるのでしょうか?深呼吸しながら、森への感謝を忘れず歩き回ります。
先日、今年初めてのキノコ狩りに行きました。
もちろんターゲットはカンタレッリ。
フィンランド人の友人と共に、いつもの松と白樺の森に行きました。
今回はペットのワンちゃんも一緒です。
フィンランドではワンちゃんの散歩も森の中ということが良くあります。
キノコは雨が多い時期に良く採れます。この夏は雨が少なく乾燥しているようで、あまり採れないだろうと思っていました。しかし、森の中を2時間ほど歩き回り、バケツ1杯分のカンタレッリを収穫することができました!
カンタレッリはクリーム料理にぴったり
特にヨメはフィンランドに来て以来、キノコ狩りに夢中です。
喧騒から隔離された森の中で夢中になれる時間そのものが好きなのですが、なによりキノコが美味しいので、また採りに行きたいとよく言っています。
カンタレッリはクリームソースかリゾットで食べるのが私たちのオススメです。
今回は新じゃがのカンタレッリクリームソースがけを作りました。
材料 (4人分)
・新じゃが 4-6個/人
・カンタレッリ 300-500グラム
・玉ねぎ 1玉
・バター 30グラム
・水 150 cc
・牛乳 200cc
・生クリーム 200cc
・野菜コンソメ 1個
・白ワイン 大さじ1杯
・胡椒 少々
・チャイブ、パセリ 適量
・チーズ お好みで
手順
①新じゃがを水から煮る。沸騰したら10分ほど茹で、保温しておく。
②深めのフライパンで洗浄後のカンタレッリを乾煎りする (強めの中火)。たくさん水が出てくるので、10分ほど煮たててゆで汁をとりわける。
③カンタレッリとみじん切りにした玉ねぎをバターで炒める (中火)。
④玉ねぎが透明になったら、ゆで汁、水、コンソメを加えて10分ぐつぐつ煮る。
⑤牛乳、生クリーム、チーズを加え10-15分ことこと加熱する。
⑥白ワイン、胡椒を加える。
⑦ワインのアルコールが飛んだら、刻んだチャイブとパセリを散らして完成!
カンタレッリを調理するときのポイントは以下の通りです。
・ハケで汚れを取り、水洗いを念入りに行う
・調理前に乾煎りする (生だと毒性がある。煎ると旨味が増す。)
完成したソースがこちら。
茹でたジャガイモにかけていただきました。
キノコのうまみがクリームスープにしっかり馴染み、優しくコクのある仕上がりになりました。
カンタレッリのスープはインスタントで売っているくらいフィンランドでは人気の料理です。
スーパーで売っているのでお土産にどうでしょうか?
画像引用元: Blå Band Lämmin Kuppi vähälaktoosinen Kantarellikeitto
話が脱線しますが、フィンランドにお越しの際、ぜひ食べていただきたいのはジャガイモです。フィンランドのジャガイモは種類豊富で安く、とても美味しいです。夫婦ともに、こちらに来てフィンランドのジャガイモの美味しさに感動しました。
夏は特に、新ジャガイモの季節です。
“Varhaispernat (早生ジャガイモ)”という小粒の種類のものが流通しています。
キノコは秘密のスポット
カンタレッリをはじめ多くのキノコは限られた場所に点在します。
それは、シイタケのように倒木に生えるのではなく、生きた松や白樺の根っこの好条件が揃った場所に生えるからです。
そのため、初見でカンタレッリを採ることは難しいかもしれません。
フィンランドにおいて、キノコが採れる場所はトップシークレットです。美味しいうえに、限られた場所に生えるからです。友人間でも、よっぽど仲が良くなければキノコが採れる場所は教えてくれないでしょう。フィンランドに自然享受権こそあれど、あくまで権利と言う事でしょうか。
食べられるキノコを確実に採集するうえでも、最初はキノコ狩り経験者と一緒に行くことを強くお勧めします。
採れる場所を見つけたら、忘れず覚えておきましょう。そしてしばらくしてもう一度行ってみましょう。カンタレッリは同じ場所に生えるので、そこがあなたの秘密の場所です。
また、フィンランドの森は蚊やダニが沢山います。刺されると不快なだけでなく、感染症の発症リスクもあります。詳しくは過去記事を読んでみて下さい。私たちはしっかり対策をしてから森に入っています。
夏のフィンランドを楽しむために蚊とダニ対策をしました
これからも森に感謝してキノコを楽しみます
フィンランドに移住して以来、たくさんの時間を森で過ごしています。
環境保護や生物多様性の重要性がさけばれるようになり久しいですが、友人がフィンランドのこのようなことわざを教えてくれました。
Metsä vastaa niin kuin sinne huudetaan
メッツァ ヴァスタ ニーン クイン シンネ フーデターン
あなたが呼びかけるように森は答えるだろう
ダンナの声に出して読みたいフィンランド語ナンバーワン。
私たちはフィンランドに根付くこのような価値観が大好きです。
これからも感謝の気持ちを忘れず、フィンランドの自然の恵みを頂こうと思います。
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